安仁神社 安仁=兄??

安仁神社の『安仁』は「あに」ですが、創建当時『兄』は「あに」ではありませんでした。
『兄』は、「せ」「いろね」でした。
「あに」と見えるのは、『伊勢物語』だそうです。

邑久郡誌では、
我國上古兄を呼びて「せ」ご云ひ弟を「なせ」といへり。又兄を「いろね」弟を「いろと」とも云へり、其の「な」と云ひ「なに」と云ひしは汝の義なり。兄の字又讀みて「え」と云へり。「え」と云ひ「せ」と云ひ「ね」といふは何れも轉訛りなり。兄を「あに」といひ、弟を「おとうと」と云ふことは中世以後の唱にして、奈良時代の通用語たる萬葉集などには絶えて見る所なし。始めて兄弟をあにおとうとと呼べる語の見えたるは、
伊勢物語「あになどとともだちひきゐてなにはのかたにいきけり」とあるこれを始とすべし。若し神武天皇の兄に渡らせ給ふ五瀬命を祀りて起りたる古社なりとすれば、宣しく「えのみや」とか叉は「せのみや」とか古き称を云ふべき筈なるに、未だ「あに」の語を用ひざる時代より兄宮の名あるこざ豈矛盾せるにあらずや。